*『江南乃戰(上海事變)』本

 祖父の書棚にあった『江南乃戰(上海事變)』昭和7年春出征記念/歩兵第36聯隊
昭和7年発行/印刷所:明治天皇御写真帖刊行會印刷部(ハードカバー製40頁)写真集&連隊行動概要&戦死者名簿及び写真のページを繰る。


 挿絵タイトル「不眠不休」「夕の墩團」
「敵側も猛然防火激烈にして、死傷者続出するも前進・・・突入肉弾戦と化し、遂に部落占拠。写真は○地点、敵體体百六十余。壕内には累々として見るも凄惨言語に絶す」とある。

 出征〜戦闘開始直前〜戦闘〜戦蹟〜パレードの写真が多く網羅されており映像とは違う迫力で胸を突く。

 驚愕は①「上海付近戦局要圖」②「敵情及び師団攻撃部署要圖」③「戦闘経過要圖」のページは(5万分の一)具体的な戦略がイメージできる手書き図であった。


 「支那非戦闘員にして残されし老若男女に菓子を与えつつある我が兵の温情美」、
 「可憐な支那人子供父の死も知らず取り残され歩兵の人情美に嬉々としてカメラに向かう場面」、
 「広東人墓地の正面にして其の上塀に大書する排日文を見よ」
 「我が軍を最も悩ましたクリーク全景」
 「戦死者遺骨還送」や荒涼としたした戦地写真等など。
 
 暖衣飽食時代の戦後生まれの私ではあるが、熱いものが こみ上げ、涙で目がかすむ。


 私の係累は誰もこの連隊に入隊している者はいなかったが、従わざるを得なかった時代背景と共に、当時の国民の抗えないムードが伝わってきて、私もその時代に生まれておれば愚行、愚考を犯していたのでははいだろうか、人間であることが怖く、人間とは悲しい者だ、狂気無しに有らざるなりかと。


 他の惑星の異星人が地球を攻めて来る!!と切羽詰らない限り、地球人は「内輪モメしている場合ではない!!」と思えないのカモヨ、地球の内戦&戦争は無くならないカモヨと遺伝子のなせる業か生物の宿命か。


 パウルツエラーンの詩句が浮かぶ。
 又、キューブラー・ロスの『私達ひとりひとりの中に、ガンジーヒットラーが棲んでいる・・・。私達は互いに癒しあい又、自己を癒す為に地上に生まれてきた・・・魂の癒しである。」


 私達は互いに憎しみあい、又、利己愛のために地上に生まれてきたのだろうかと思えることが、自身の卑近な例からも、様々の報道からも暗澹とすることがある。
 その中で様々な芸術、文学が産まれ、科学の進歩と共に人間はなんとやっかいな生物ジャイ。

 タイ語の「憎む」は → ジェップ(痛い)ジャイ(心)と書く。


 『砂礫は億年の時間を蔵し・・・我々の中にこそ億年の時間が生きている』の言葉を反芻してみる。